森/ひだかたけし
していた
彼女の瞳の
不思議に魅惑的な光を受け
森は奥深く広がっていた
見えないもの、
見えるもの、
両者がせめぎあい
くっきり濃密な
輪郭を形づくり
力動している
森の存在、
彼女の瞳は
そのことを
映し出していた
雨の匂いがした
雨の中を歩いて来た
意識の窪みに
旧い記憶の光景と
新しい記憶の光景を
同時に並列させ見い出し
彼女の存在を
信じたり、
疑ったり、
迷い確信し
歩いて来た
白い裸の少女と
心の深い傷、肉の戯れ
杖をついた片腕の老人と
戦地での殺し合い、消えない光景
波打つ光の残響、
雪原遠く聳える雪峰、
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)