反動/ホロウ・シカエルボク
 
パトカー、大人たちの靴音、住宅地から聞こえてくる生活音―そういったもののいっさいが下らないと感じていた、こんな音がまったく聞こえてこない世界に行きたいと、子供にしては強く願っていたものだった…そんなことはすっかり忘れてしまっていた、もう何十年も昔の、ほんの一時期のことだったのだ―不意に蘇ったそんな記憶は、不思議と心をざわつかせた、思えばあの頃考えていた以上に、なにかを願ったことなどなかったような気がする、たまたま感情が抜けなかった死体だと、思春期にはそんな風に自分を称して青臭いシニカルな笑いを浮かべていた―(つまり、ここは…)そう考えずには居られなかった、俺はなにか、奇妙な入口を潜り抜けて、あの頃
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