反動/ホロウ・シカエルボク
 
温度は感じられなかった、何度か同じように掬っては飲み、喉は潤った、だからまた黙って立っていた、ふと気づけば風の音もしなくなっていた、無意味なほどの無音がその場を支配していた、そんな場所のことをいつか夢想したことがあったのを思い出した、音のない世界―そんな世界に行ってみたいと考えていたのはいつのことだったか、まだあまり歳を重ねていない頃のことだった気がする、日常の中にある音があまりにつまらないものに思えていた時期があった、そう…小学校二年生くらいのことだったはずだ、朝起きて、母親と交わす会話、朝食、着替え…登校や友達との会話、朝の挨拶、授業、ちょっとした喧嘩、給食…下校、車やバイクの音、救急車やパト
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