Jack et Jacques/墨晶
 
訊きたくなった。その気まぐれはきっとウィスキー入りの紅茶に酔っていたせいだ。

「ピースィー(Piecy)」
「ホントの名前は・・ポーリーヌ」
「嫌だったのよ、すべてが」
「誰もアタシを知らない場所に来たかったの」
「だって」
「もう良いじゃない、そんなことより」


??

 午前一件、大腸ポリープ摘出。午後一件、胃の部分切除。
 今、わたしは疲れている筈なのだが、寝椅子で茶を飲んでいるわたしは、ちっとも安らいでいない。
 隣国に来たとき、なにも考えていなかった。兎に角ただ、誰一人わたしを知る者がいない場所へ来たかった。
 スキルのお陰で運良く迎えられた。専門
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