さまよう地下茎/ただのみきや
 






むかし実家では

鳥籠でおしゃべりな被害妄想を飼っていた

働き者の父は冬枯れの庭のよう
舌の上には灰色の冷たい空虚だけがあった

母はいつも結び目に病んでいた
指先が不器用でなにひとつ解くことができず
部屋の壁一面に様々なハサミを掛けていた

弟の遺骨は墓には収められず四角い箱のまま
わたしの部屋で青い野球帽をかぶっていた

わたしはいつも外出時にはリードを付けていた
学校へ行く時も電車に乗る時も
どこまで行っても決して切れない赤黒い臍の緒

妹は枝豆みたいに体から魂が飛び出すのを恐れて
ほとんどしゃべらなかった
しゃべる時
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