詩の日めくり 二〇二二年五月一日─三十一日/田中宏輔
 
まれれば幸運といったところだろうか。記憶に残る作品。


二〇二二年五月十八日 「もし万一……」


 6作目は、アイザック・アシモフの「もし万一……」若い夫婦が電車に乗っていた。向かい側に男が坐った。男は夫婦に、その夫婦の過去を見せるガラスの板を持っていた。夫婦は、もし万一あのとき、あおういうふうにしてなかったらと考える。何度かガラスの板を見た夫婦だが、考えても仕方ないと思う。

 7作目は、マレイ・レンスターの「もうひとつの今」交通事故で妻を失った男が、愛する妻と死後も手紙のやりとりをしている。妻の世界では夫は死んでいたのだが、妻は夫にラブレターを書きつづける。ふたりの存在する
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