剥き出しの鉄を打ち鳴らす/ホロウ・シカエルボク
 
なかなか忘れられなさそうなそんな疑問が、膝をがくがくさせながら最上階を目指して走る俺の脳裏でループする、見上げた時にはこんなに高いなんて思わなかった、ろくに動かしたこともない身体はとっくに悲鳴を上げている、最上階に行くと何が見えるだろう、世界の果てとはいったいどんな場所だろう、息が上がり、咽こみ、涙が流れる、啼きそびれたツクツクボウシたちの無念が俺の中で渦を巻いている、重たい鉄の扉を開けて俺はとうとう辿り着く、屋上、夢にまで見た最上階、そこに在るのはただの街の景色だった、俺は絶望して悲鳴を上げる、うずくまった途端に襟首を捕まれ引き起こされ、青筋を浮かべた警備員の顔を見る、余計な仕事を増やすなと擦れ
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