湿潤/ただのみきや
毒を吸い出すように甘い記憶を吸いながら
カウンターテーブルが縦になり
一日の出来事はすべてオシャカになる
沈没船は鯨に変わりみんな連れ去られ
パークは入日の冠
記念写真には歓声の影法師
地団駄を踏むことばたち
理由を孕むより早く
予兆的行為としての娯楽があった
死者の眼差しによるライト・アップ
黒いお城はバタークリームでお化粧し
窓という窓から裸の少女たちが花びらを撒く
やがてどこかの空挺部隊が降下して
一斉に攻撃を仕掛けると
火は燃え上る
美しくうねりながら踊るように
七色の火の粉 螢の銀河
肉の焼ける臭いと伽羅や乳香の香り
洗い過ぎによる脳の流失
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