残された怠惰/岡部淳太郎
 
抗癌剤治療等もするには体力が落ちすぎていると医者から言われた時に感じた気持ちが、母の死によってぶり返し、なかなか消えない膜のようなものとして、僕の心の表面に張りついてしまった。そこから生じる茫然とした感じ、それを言い表した詩である。「何もかもから離れて/いよいよ一人になって/これから訪れる季節に/耐えるための準備を始めなければ」というのは一人になったことの自覚であり、「車が一台も停まっていない駐車場に/大量の蜻蛉が飛んでいた/彼等は僕の頭上から/おまえはこれから/こうして生きていく他ないのだと/しずかに告げていた」というのは一人になってしまったことの他者からの追認である。つまり、ここでは自らからも
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