声/ふるる
よ、との呼びかけがここにあった
寒さにかじかむ指と共に
暑さに憂える瞳と共に
危ない淵に立っている
沈黙すれば動き出すものが必ずある
一度も呼ぶことのない名は
めまいするほどあり
めくるめくのは月日ではなく声自身だ
僕と君の名もありふれてはいるが呼ぶ者はさほどいない
ささくれた毎日に置かれる友の
友よ、と言ったその声は
今は彼方
激しく動いている
話す言葉がとめどなく溢れてあちこちに飛び火
火傷や痛みがあらたまって言う
君はまだここにあっていい
明日も
見えるはずのない音と音が
ぶつかって火花を散らしたから
底がやけに明るいのだという
ふつふ
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