浸水式――擬人と踊る/ただのみきや
 
を変えながら
  きみの瞳で坦々と

  だが風とのやりとりが気にかかる
  ぼくは蝶より嫉妬深い
  新しい手品を見せようと
  百万回も繰り返された秋のスケッチ
  一編の卒塔婆として視界の外に立つ


包んでいた
両手の中にはなにもなかった
寒いのはわたし
それともなくしたもの

内に破れて抗わずに
風の真正面
ちょっかい出さないで
増えた仔鼠はみんな水面へ還し
火を盛った盃を
くちびるの意気地で


  失わないために失って
  忘れないために忘却し
  ただ夢でのみ具象をまとう
  姉や妹を愛してしまった男のように


蝶が啼くの
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