浸水式――擬人と踊る/ただのみきや
 
くの 怖いくらい
白粉箱の中の死にきれない小指のように

繭のころは時化た夜の海
瞼を縫われたまま月を食べていた


  楓一葉ワイパーにそっと
  木洩れ日をくぐる雪虫たち
  ことばの顔に悪戯書き
  淫夢の残り香のようなひと


ねえ 心中しましょうか


  もうなんどもしてますよ

         
         
                   《2022年10月22日》









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