羽化することのない痛み/由比良 倖
 
『Colour Green』というアルバムが大好きで、月夜を夢見るような世界に、すっかり引き込まれている。2006年にリリースされたアルバムだけど、録音されたのは1970年から1973年のことらしい。ニック・ドレイクの『Pink Moon』が出たのが1972年なので、ちょうど同じ時期にギターと声だけの、目立たない、でも世界中の孤独な人々に愛され続ける2枚のアルバムが録音されていたんだなあと思うと、50年の時間の経過なんてまるで幻想みたいに思える。僕は本当はこういう、ずーっと未来の人にも「今」を届けられるような音楽を作りたいんだと思う。言葉を書くとしても、未来に読む人が「いかにも昔だなあ」と思うよう
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