羽化することのない痛み/由比良 倖
 
景はただ、僕の心が空に反映されて、全てはただ狂ったまま押し黙っているよう。自然というものにまったく興味が無かった学生時代の感覚を、ふと思い出す。
 大学は美しいポプラ並木や、図書館前の澄み切った人工の湖で有名で、誇らしげに、この景観が何かの賞を取ったとか、わざわざ看板を立てていたけれど、僕はその綺麗らしい景観を、全く覚えていない。覚えているのは夜だ。夜の構内の、誰もいない冷たい空気と電灯の光。一番素晴らしかったのは、完成したばかりのラグビー場の真ん中で、真夜中そこの芝生に転がって、芝の匂いや、夜空いっぱいの冷たさに全身で浸ったこと。夢のように懐かしい。ポプラの葉がどんな形なのかも、幹が真っ直ぐな
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