詩の日めくり 二〇二一年十三月一日─三十一日/田中宏輔
 
う違うのだろうか? 夫人の魂、夫人の本質とはどのようなものか? たとえばソファの隅に落ちていた手袋を見て、その指のねじれ具合から間違いなく彼女のものとわかるような、そんな夫人ならではの特質とは何だろう?
(ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』第一部・9、御輿哲也訳)


二〇二一年十三月十五日 「断章」


 もし神が現れたら、どうしよう? どんなものなんだろう? ぞっとさせられるような無限の姿、一つの顔、深い沈黙、一つの声、落ち着かせてくれるような優しい愛撫? 現れたとして、彼がいることに気づくだろうか? 気づかなかったら、無駄に、誤って死ぬことになる。
 部屋の中は静まり返っていた、
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