詩の日めくり 二〇二一年十三月一日─三十一日/田中宏輔
 
り、その焼けつくような虚無感で自分に襲いかかってくるのを待った。
(ゼナ・ヘンダースン『果しなき旅路』1,深町真理子訳)


二〇二一年十三月十一日 「断章」


(…)ピエーとセヴリーヌのふたりは、顔を見合せて、笑いあった。衰えるものは何ひとつ見のがすことのない若々しい朝の光も、若いふたりの顔には寛大だった。
(ケッセル『昼顔』三、堀口大學訳)


二〇二一年十三月十二日 「断章」


 シャルロットが、同情して、
 ──あの畜生みたいな男の相手をして、さぞ困ったでしょう?」とたずねても、セヴリーヌは答えずに、かえって、熱っぽい笑いを見せた。アナイスの家の女たちは驚
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