詩の日めくり 二〇二一年十三月一日─三十一日/田中宏輔
 
。)だが彼等はたしかにより藝術家であつた。フランシス・ジャムは詩人であつた。そして、それでしかなかつた。
(ジイド『ジイドの日記』第五巻・断想、新庄嘉章譯)


二〇二一年十三月十日 「断章」


(…)リーは身動きした。とじたままでいようとして、まぶたがぴくぴくした。しかし意識と明るくなる光とが、むりにその目をあけさせた。彼女は二枚のモスリンのシーツのあいだで、もう一枚のシーツでいようとするかのように、薄く平たく横たわっていた。とはいえ、白いシーツなら、朝の小鳥のさえずりも聞かず、朝食の匂いも嗅がないはずだ。リーは寝返りをうって、生というつらい重荷が自分を満たし、自分にのしかかり、
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