詩の日めくり 二〇二一年十三月一日─三十一日/田中宏輔
のではないだろうかね。寡黙で無名のシェイクスピアが、つつましい人生を重ねながら、いちどの偉大な劇的ほとばしりに必要な素材を集めたという考えには、なにかとても胸を刺すものがあると思わないかね? いつかそのことを考えてみたまえ。
(フリッツ・ライバー『『ハムレット』の四人の亡霊』中村 融訳)
二〇二一年十三月二十五日 「断章」
(…)じっさい、あの自画像はじつによく描けていた。ミッチェルが自分の楽しみのために好んで描くわけのわからない抽象画や、生計を立てるために描く陳腐なペーパーバックの表紙絵よりも、はるかに彼の好みに合ったのだ。あれは彼女が二十歳のときの作品で、父親へのバースデ
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