腸腸夫人/ただのみきや
形文字の子孫たちの黒いしみが
愛人の咀嚼に耐えられず潮解してゆく
記憶の包み紙を開いてきみの片言を頬張った
窓の外は隠喩のほほえみ
年老いた女神の体臭
胡桃の殻に包まれたまま腐ってゆく叫び
弐
われらは裏返えされた存在
記号が内包されて見えない隠喩的果肉
絶えず乱れて波立つ鏡の鱗と対峙する
自己の鏡像と交換し黒く重複し続けて
その脈は四次元に蔓延っている
だがことばほどかけ離れたものはない
われらの呼び名な主題ではない
鈴とそれを鳴らす棒の関係でなければならない
裸の音楽こそがそれに近く
ことばにすることは矛盾の体現そのものだか
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