「夏の思い出」の詩人、江間章子/藤原 実
 
江間章子はどこでだれに何のために魂を売り渡してしまったのでしょうか。

モダニズム詩が戦時下の統制によって雲散霧消してしまったのは、かつて戦後の詩人たちが戦争詩を非難して「思想性と批評性がなかったから、戦争もまた自然と捉え自然を美しくうたうように戦争もまた賛美した」というようなモダニズム詩の理念そのものの欠陥が理由というよりも、自分たちが魂を売り渡した詩人でない詩人に成り果てていることに気づかなかったからではないのだろうか。
反省すべき点があるとすれば戦争協力詩を書いたことよりも、自らの詩学を裏切ってしまったことなのではないでしょうか。
それは売り渡した相手が軍国主義であれ、戦後民主主義で
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