「夏の思い出」の詩人、江間章子/藤原 実
 
雨がふる」というところなど、彼女の意地というか、自分の詩の世界を奪われまいという思いが込められているようにも感じます。
それは彼女たち若いモダニズム詩人の庇護者的存在でもあった北園克衛でさえ、同じ本に、そのまんまな「戦争詩」を書いているのと比較すると、いっそう際立って見えます。
{引用=
「戰線の秋」北園克衛

戰線にまた秋風が立つ朝
敵壘の上に
山砲が強烈なキャベツをならべた
敵彈が
頭の上の見えない鐵線をコスつてゆく

終日前面の敵と對峙する
戰機未だし
輕傷三
月明の夜が来る
漠々たる深夜の空を覆つて
空軍のすざまじい大移動があつた

やがて拂暁の眞水のや
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