「夏の思い出」の詩人、江間章子/藤原 実
た衣裳が流行らなかつた/みんなの心が戰爭へ出掛けたから」というのはいかにも軽いですが、もちろん、ここで江間が言いたかったのは「洒落た服」のことなどではなかったことでしょう。
危険な戦争へとのめりこんで行く時局のなかにたたずんで、衣服は彼女たちの言葉のことでしょう。彼女たちが信じ、胸にいだいた純粋な花束、モダニズムの美もまた奪われていくのです。
次の詩はその名も『戦争詩集』(東京詩人クラブ編、昭森社、1939)という本に寄せられたものですが、
{引用=
「一九三七年の蛇」江間章子
戰争は女から男たちを奪ふといふけれど
それはぼくから眼をとりあげた
ぼくは姿のない彫刻と愛し合つてゐる
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