「夏の思い出」の詩人、江間章子/藤原 実
(江間章子『埋もれ詩の焔ら』講談社)
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左川の死の数カ月後出版された江間章子の処女詩集『春への招待』(東京VOUクラブ、1936)の本扉には小さく「? chika Sagawa」と記され、江間の左川に対する哀惜の念がうかがえます。
翌年、江間はこんな詩を雑誌に寄せています。
「結婚」江間章子
白鳥は帶の上で叫聲を轟かせる
今年は洒落れた衣裳が流行らなかつた
みんなの心が戰爭へ出掛けたから
相變らず
すみれの花束を持つて
わたしは危険なシャンデリヤの下にゐた
やるせないランデヴウ
字面だけを追うと、「今年は洒落れた衣
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