スズメバチ(SS私小説)/山人
 
に日にちを振り分けて行うのだが、今年はそうはいかない。プレッシャー感じながらの作業であり、疲労もピークを迎えていた。八月半ばから林業事業所の勤務仕事に加え、この登山道整備を続けていた。一か月近い間、休みなしに刈払い機を使用していたということになる。そんなハードな十二日間が終わり、ゆったりと刈り払い機を担ぎ、登山道を降下していた矢先のハチの営巣発見であった。
 「なかなか、何事もすんなりと行かせてくれないんだな」
 川村はそうつぶやくと、夕焼けに染まった遠い稜線を眺めつつ、一心不乱に洞から出入りするスズメバチを目で追っていた。
 スズメバチは凶悪である、とされている。攻撃性が高く、巣に危害を加
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