スズメバチ(SS私小説)/山人
 
を加える対象には毒針を突き刺し、間違ってショックで死に至るものもいる。だが、果たしてそうなのだろうか?
 スズメバチの女王バチは越冬し、春からはせっせと巣作りをし、仔を産む。ひたすら働きバチを生み続け、働きバチたちは女王バチや幼虫に餌を運び育てる。幼虫を世話し、餌を運び、外敵から巣を守るということを仕事とし、死んでいく。本当の悪とはどこにあるのだろうか。働きバチたちは洗脳されているに過ぎない。限られた女王バチだけがぬくぬくと生き、温床に留まっているのだ。
 「しょせん、人と同じだな」
 川村はそうつぶやき、日を改めてハチ対策に再び来なければならないと思った。
 


戻る   Point(1)