快楽からの追放者/ただのみきや
*
溺れそうな空
まつわる光はまつ毛に重く
秋桜に迎えられ
坂の上まで送られて
いつも喪服を着た
踏む者もいない影が
ことばを忘れたものたちの
風とまぐわう声を聞く
のぞき見と告げ口の世界
紙ふうせんで遊ぶこどもは
うつろな両手に月をつかんだ
誰かがのぞいていた
誰かが告げ口した
紙ふうせんはその子のこころ
からっぽなほど舞いあがる
誰があんなに放ったか
ぺしゃんこにしたのは誰か
切手
枯葉色の装いで
その蝶はフロントガラスに降りて来た
しばし光と戯れて
風に抱かれて去って行っ
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