詩の日めくり 二〇二一年十一月一日─三十一日/田中宏輔
 
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二〇二一年十一月二十六日 「断章」


 彼は拘束服を取り除いた。私は昔の夢の場面を目のあたりに見ているような気がした──。昔の夢に迷って、そのままの同じ手順で全てが運ばれたのだ──。実に正確に、事は行われたのだ──。権威が既成の事実となったのだ──。もし、初めに、ウィンホーストが絶叫しながらスタートしていたら、誰も彼の言うことに耳などかさなかっただろう──。この世界の果ての鏡が、私の過去をそのまま映し出しているのだ──。これはまさに鏡の壁なのだ──。ウィンホークスは叫ぼうとはしなかった──。いかにも落ち着いて、彼は腰を掛けた──。私は
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