長い漏電/ホロウ・シカエルボク
 
かった、というか、理由そのものが俺にはなかったのだ…間違って感情を持ってしまったレンズのように俺は周囲を見つめながら生きた、交わることのない人間たちがあらゆる感情を忙しく行き来するのは見ていて楽しかった、彼らがこだわっていることは俺には下らないことのように思えた、前髪の跳ね具合、制服の着崩し方、ニキビ、スカートの皺、リボン、恋の真似事、反抗ごっこ、青春―そこに真実などひとつも無いような気がした、おそらくは無かったのだ、本当に…校舎は二つの建物に別れていて、漢字の二のように並んで立っていた、俺はいつもその渡り廊下に立っていて、ぼんやりとあらぬところを見ていた、ある日、俺が校舎の端にあるツバメの巣を見
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