長い漏電/ホロウ・シカエルボク
 
外界を窺う蛇のように繋がれていた場所から離れた赤いコードが覗いていた、時々身体に感じないくらいの風が吹いているのか、こちらを威嚇するかのように静かに左右に揺れた、何故だ、と俺はそのコードに話しかけた、もしもそいつが返事をしたら逃げ帰ることが出来るかもしれないと思った、でもそいつは揺れるのをやめてほんの少し亀裂の中へ身を隠しただけだった、今は話したくない気分だったのかもしれない、いつしか俺は記憶の中を彷徨っていた、望まぬ集団の中で、浮遊霊のようにゆらゆらと揺れていた時代の記憶―そこに自分の居場所がないことは初めからわかっていた、けれど俺はそこに居なければならなかったし、俺も別に拒むほどの理由もなかっ
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