詩の日めくり 二〇二一年九月一日─三十一日/田中宏輔
、増田まもる訳)
二〇二一年九月十九日 「断章」
そのひとつひとつの映像がおれの皮膚に記録されていった。それはおれの顔や手の光輝くフレスコ画を形づくる周囲の世界の一部であった。今日という日を穏やかに保証しているような、その間接的メッセージに気分が爽快になって、おれはとりあえずなにも身につけないことにした。まだだれも起きていないようなので、寝室をぬけだして階下の玄関にむかった。どちらをむいても、掛け布で覆われた家具たちが自分たちの再編成の順番を待ち受けていた。
(J・G・バラード『夢幻会社』22、増田まもる訳)
二〇二一年九月二十日 「秋山基夫さん」
秋
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