神隠し/ただのみきや
 
閉めろ
だが床下は口を開けている
這い上がる影は
おまえ自身が殺したおまえの双子のかたわれか
みぐるみ剥いで殺して埋めた
金糸雀売りの行商人か
それとも幼なじみ
母親以外でおまえが初めて裸を見た少女
神隠しとうそぶいて
全部おまえが殺したのだ
殺されたのは全部おまえだ
ランプの周りを大きな蛾が飛びまわる
焼け焦げる かすかなささやき
灯りがとどくわずかな所で
おまえはなにを書いている
おまえの影はどこへつながっている


雨粒ひとつ光に染まり
にわかに個
あるいは孤
時の疾風の凪ぐ刹那
人はひとつの顔を持ち
こころに無数の仮面をつける
笹舟に乗せた霊
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