流れるごとく書けよ、女詩人/藤原 実
永瀬清子はそんな人たちを、いや、むしろそうであるからこそ、書きに書けよ、と励ますのです。
{引用=
「流れるごとく書けよ」永瀬清子
詩をかく日本の女の人は皆よい。
報はれること少なくて
病氣や貧しさや家庭の不幸や
それぞれを背負つて
何の名譽もなく
何年も何年も詩をかいてゐる
美しいことを熱愛しながら
人目に立つ華やかさもなく
きらびやかな歌聲もなく
臺所の仕事にもせいだして
はげしすぎる野心ももたず
花を植ゑたり子供を叱つたり
そして何年も何年も詩をかいてゐる
先生もなく弟子もなく
殆ど世に讀んでくれる人さへなくて満足し
風の吹くやう
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