流れるごとく書けよ、女詩人/藤原 実
ることも出来ないし
たゞ好きだと云ふだけで云ひ張ることも出来ないと。
それだけの事で何もかもまちがへてゐたのだ。
それは大變な間ちがひだつたと、三十年も生きた今、やつと氣がつき出したのだ。
私の好ききらひの方が
私の論理より進んでゐたのだ。
私は非常な論理的どもりで
その吃りが、心の底ではよく判つてゐることも云ひかねてゐるだけなのだ。
私は今までその吃りの犠牲になり
色々の忍耐をかさね遠慮ぶかくし
どもり程度にしか自分を信じなかったのだ。それ以上の私を信じること、
これは大したことだ。私の好き嫌ひにはたゞそれだけでもつともつと深い根據
があるのだ。
(筆者注釈ーーーこ
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