流れるごとく書けよ、女詩人/藤原 実
 
で「婦人はもし小説を書くとすれば、お金と自分ひとりの部屋を持たねばならない」と言っていることはよく知られていますが、永瀬清子にはおそらくそのどちらもなかったことでしょう。

私は若い頃から永瀬清子の詩を好んで読んできましたが、特に女性詩人であることを意識したことはありませんでした。彼女の積み重ねてきた詩業と高齢になってもなお衰えない創作意欲に驚嘆し、尊敬もしていましたが、それが上に引用したような犠牲をくぐりぬけて来た結果であることなどには思い及んでいませんでした。

{引用=
 「抵抗」永瀬清子
水の抵抗があるので人は泳げる。
現実の不自由はつねに詩の原動力。

「性」永瀬清
[次のページ]
戻る   Point(1)