流れるごとく書けよ、女詩人/藤原 実
 
大地的な母親であつていい詩をかくといふことは、實はひどい矛盾があるので、そんなことは言葉の上で考へるやうな陶酔的感謝のみがあるはずはありません。それが實に調和的に成りたつてゐる場合には、そこに凡人にけつしてうかがひ知られぬほどの深い痛ましい犠牲がはらはれてゐるにちがひありません。勿論晶子女史の場合のそれは私の想像にすぎませんけれど。そして私自身の場合はそれほどに天才をめぐまれてもゐず、主婦としての完成もしてゐない點だけを差引いて考へなければならないのですけれど。それにしても、捨てがたい詩といふものは何といふ悪因縁がと、ほとほと驚かされます。」

ヴァージニア・ウルフが『自分ひとりの部屋』で「
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