詩の日めくり 二〇二一年八月一日─三十一日/田中宏輔
 
気がなさそうに思えた。その水を目のなかにおさめると、揺らさないようにそろそろベッドに戻った。つぎの日の夜は物音は聞こえなかったが、やはりベッドから起き上がった。水はひどく少なくなっていて濁っていた。前日と同じようにベッドに戻ったが、その日もやはり水が自分の様子をうかがっているような気がした。ただ今日は、昨日とちがい水面に浮かんでいる枯葉のあいだからじっとこちらを見つめているように思われた。マルガリータ夫人は目の奥にたたえた水を見つめていたが、その様子はまるで水と夫人がたがいに見つめ合っているようだった。眠りかけたときに、それが自分の魂からくるのか、水底からくるのか分からなかったが、一種予感のような
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