詩の日めくり 二〇二一年八月一日─三十一日/田中宏輔
 
かれた。竜の正体は蒸気機関車だった。

 13作目は、「おくりもの」クリスマスの夜に火星に行く夫婦とひとり息子。クリスマス・ツリーのかわりに、光り輝く光を見せてやるという話。


二〇二一年八月三十日 「断章」


 しばらく横になって休んでいたが、物音が聞こえてきたので、起き上がって中庭に面した廊下の窓のところまで行った。中庭には、月やその他の光が照り映えていた。そのとき豊かな水をたたえた噴水が目に入ったが、それはまるで彼女が現われるのをじっと待っていた顔のように思えた。最初は、石造りの噴水が黒ずんだ顔で、水がきらめく視線のように見えたのだ。けれども、見たところ水はいかにも邪気が
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