詩の日めくり 二〇二一年八月一日─三十一日/田中宏輔
に乗るお金を貯めていたスクラップ工場の社長がいたが、ひとりしか行けないお金だった。宇宙船の実物大の模型のスクラップを買う。それに子どもたち5人を乗せて、宇宙旅行に出かけるふりをする。子どもたちは喜んでいた。妻は夫に「あなたは世界一の夫だわ」と言った。
神は言葉っていうけど、言葉が神なんだって思う。でも、ここで、言葉にならなかった気持ちや情景はなんだったんだろうなって思った。言葉にしたものなんて、一生の間の出来事や気持ちの何分の1なんだろう。しかもその言葉にしなかったもののほうが大切なことがいっぱいあったことに気づいた。
二〇二一年八月二十六日 「宇宙船乗務員」
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