言ふなかれ、君よ、わかれを、/藤原 実
 
山薫の次のような詩にはそういう詩人たちの心情がよく出ているのではないでしょうか。


{引用= 『南洋を望んで』 丸山薫


われ一億の民草のなか
名無く貧しき詩人なれど
けふの日ぞ氣宇おほろかに
太平洋の渚に立ち
南なる水平線を畫板にして
雄渾なる素描をこゝろみみんとする

わが眼には不思議に見ゆれ
茫々千餘理の雲波のかなた
密林生える常夏の嶽と岬
爪哇、ボルネオ、セレベス、比律賓
マレー、グワム、ウエーキ、布哇ら
みなわが引く線の基點なり

わが企つる繪のこころは何ぞ
いまだ過ぎし世の何人も夢想せざりし
飛躍日本の切なる希ひ
わが描かんとする繪の姿
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