詩の日めくり 二〇二一年五月一日─三十一日/田中宏輔
 
のだけれど、どうなるのかは忘れてしまった。

 ぼくの記憶の底にあった言葉、「わたしの同情をさそうのは、カロン・バンです。女は男より裏切りには慣れているものですけれど、ずっと深刻に感じとるのです」(大和田 始訳、141ページ)

 錆の砂漠と呼ばれるところからエネルギー剣や飛行艇など利用できるものを運び出し、古代の科学技術に頼る超未来の話。中世のように女王がいて、貴族がいる。二人の女王が覇権争いをしている。脳髄を取り出す頭を切り取る機械が跋扈している異様な世界。主人公は自分を詩人にふさわしいと思っている卿。


二〇二一年五月二十一日 「世界SF全集 第32巻 短篇集・現代篇」

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