みかづきの刺さる湖面/秋葉竹
 



山の奥の湖に
異界から来た人がながれ
ながれ着いている

旅を終えた切なさで
悲しみを掻き乱す割れた鏡さ

風に揺れる
湖面みたいにあっけなく

乱れる生

生きること
いつも
いくつも
だれかの助けを借りて
険しい山道を汗かいて登るみたいに

生きること
限りある時間を読んで
しとど濡れそぼる心に
ずぶ濡れのままに涙も遠ざける

生きること
いろいろあってもたま〜には
死にたくなっても
肩肘はらず
笑って
咲いた
清冽で
すっぱい白い花の
香気を吸って

生きること

死を
売るなんて
できない

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