木切れ/岡部淳太郎
 
だけ病気になりやすいのと同じように、年を取った彼等はどこか乾いている。それも理の当然だろう。人は若い時には活力があり何でも出来そうな気になるものだが、年老いるとそれもなくなり、精神的にはある種の諦念のような気持ちに支配され、身体の方は次第に健康を失っていってしまうものだ。年老いるということは、乾いた木切れのようになってしまうということでもあるのだ。しかし、そうすると、まだ五十五歳の私が乾いた木切れになるのは早すぎるとも言える。私はこの年でなぜ既に木切れであるのか? 私の葉は落ち花は枯れ、実は腐ってしまったのか? 私の体内の葉脈にはもうなんの水分も残っていないのか? 早すぎる渇き。その中で私が見つめ
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