木切れ/岡部淳太郎
人々は、実はそれこそが虚飾であり、その奥に一歩足を踏み外せば無意味の穴に落ちこんでしまう、そんな危うさを元々秘めているのではないかと。
今回入院したのは以前から調子が悪かった心臓がますます不調となり、それまでの動悸や狭心症の痛みに加えて呼吸困難の症状が出て来ており、自分でもさすがにまずいと思って自ら救急車を呼んだからだが、病院に担ぎこまれて医者から入院しなければならないと言われた時、目の前で緞帳がすーっと降りてゆくような感覚があった。それまで当たり前にあった日常は寸断され、見たことのない現実に旧知の友人であるかのようにじっと見つめられている。そんな感じに思えたのだ。
そうして始まった入院生
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