純粋遊戯/ただのみきや
 
を喰らい
記憶は感光する
捉えられないものに捉えられ
遠いさざめきへ飛ばされる
だがその慣性は追いつくことのない叫び
夕陽のよう裂けに裂け
嘔吐する
なにかが喘ぐ
起伏のないスロープの上
躓くべきものに渇き餓えて

めくるめく夏の抱擁に
ふところの闇を嗅いだのだ
揚羽蝶が横っ面をかすめ飛び
紫陽花の輪郭は白くとける
だがこの身のどこを探っても
忘我の残り香すらすでになく
ただ干乾びた言葉として
自らを供物とするほかなく
光に炙られ
影に喰われて

階層は境界を失くし階段だけが無数にサクソウする
病院にもガッコウにも役場にも見える建物の中
その姿を見る
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