詩の日めくり 二〇二〇年十三月一日─三十一日/田中宏輔
さくはなく、高校時代にだって、ぼくら学生がやっているコンパに担任の先生の河合先生が来られて、「これで酒でも買ってこい。」といって、一万円札を置いて帰っちゃったことがあるくらいだった。いまなら大問題だろう。
二〇二〇年十三月十二日 「きょうも悲しい網を投げかけている。」
映画の『イル・ポスティーノ』のなかで、たぶん、主人公の郵便局員が朗読していたと思うんだけれど、パブロ・ネルーダのつぎの詩がよかった。
パブロ・ネルーダ 「歩きまわる」
俺は人間であることにうんざりしている
俺が洋服屋に寄ったり映画館にはいるのは
始原と灰の海に漂うフェルトの白鳥のように
やつれ
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