詩の日めくり 二〇二〇年十三月一日─三十一日/田中宏輔
 
そこで、詩人役の役者が、「悲しい」という形容語はまさしく正しい形容語だねと言った。この部分も忘れられないやりとりの映像だった。「きょうも悲しい網を投げかけている。」いい詩句だと思った。しかし、もしかしたら、これは記憶違いかもしれない。ネルーダ役の役者が、漁師が漁船で網を投げかけているのだが、それについてどういう形容語がいいだろうかと郵便局員役の役者に尋ねたら、彼が「悲しい」という形容語をつぶやいたのに感心したのだったかもしれない。古い映画だ。思い出も錆びついている。詩人役の役者が郵便局員役の役者に「きみなら、どういう形容語をつけるかね?」と尋ねたのだったかもしれない。とかとか書いてたら、无さんに教
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