彼の欠片/ホロウ・シカエルボク
 
るとドン・ヘンリーの曲が流れていた
ボウイにあやかって作ったようなあの曲だ
ドン・ヘンリーにはそれほどの才能があるような気がしない
スピリットはカリフォルニアで使い果たしたのだろう
ソファーの上でほんの少し眠った
夢の中で俺は
真っ黒いテレビ画面を見ながらゲタゲタ笑っていた

目覚めると真夜中で
ラジオは終了していて
窓の外を通る
人や車も
鳴りを潜めていた
すべてが静まり返っていた
あの男がそこに居るような気がした
きっと、これは
同じ種類の静けさなのだ
すっかり忘れて
もう思い出すこともないだろうと思っていた
あの男のことをまた
ありありと思い出したこと
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