白い蝶/ただのみきや
 
が返るばかり

だがまだ詩になり切れないその喘ぎは美しく
生と死のはざまにある園のようにおぼろげで
取り返しのつかない喪失を甘く匂わせる


防風林の間の路に車を止めて風を見た
激しい愛撫にも囁きしかもらさず
林はふところに鳥の囀りをしまっている
風が樹をリードすれば
木蔭と木漏れ日も踊り出す
明滅する二次元には音もなく風もなく
その狂乱は点いては消えて跡形もない

リズム 啄木鳥の無心
無欲なほどの貪欲で逆らうほど己に忠実に


黒焦げの感情を培養液につけて
触覚の先で文字をなぞっている
失われた言葉がめかしこんで大股で歩いている
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