鬼女遠景/石と花/ただのみきや
とした
感触だけがあって痛みはない
*
羞恥心を鞭で打て
自尊心を縛り上げろ
溶けたガラスの胃袋の
引き潮に磔にされた
死んだばかりの肉体に
いまだ這い回る
距離0の言葉を釘で打て
*
胸に真っ赤な海が広がって
波頭が熱い
おぼれる瞳を介さずに
おのずとのけぞる
琥珀の影に鍵はなく
和紙のように破る
花の息 水の音
*
きみは鉱脈を求めて掘り進み
ついに地獄を掘り当てた
伝説も文学も伝えてはいない
真の苦しみはきみのもの
辞退できればいいけれど
それはただきみのために
歴史の前から用意されたもの
絵図もな
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