透過の雨/ホロウ・シカエルボク
くの
打ち捨てられた家のブロック塀に
拾ったチョークで醜い虫の絵を描いた
どうしてそんなものを描こうと思ったのか
よくわからないまま一時間ばかりチョークを動かした
出来上がりは見事なものだった
でも誰も見ていなかった
思うに、あれは
俺自身の詩だったのだ
俺は、我知らず
あそこに自らの詩を記したのだ
津波のように家を飲み込まんとする
雑草の隙間に
強い雨が降るか
お節介な誰かに消されるまで
あの虫は、あそこで
生き続ける、あまり利かぬ目と
歪んだ口と
おぞましい六本の脚を
威嚇のように角ばらせて
そこには憎悪すらあるような気がする
テレビプログラムで見
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)